理学療法士の山神です 😛
高校野球も終わりましたね。
決勝戦は大本命の大阪桐蔭高校と秋田の県立校の金足農業高校という対照的なチームの対戦になり、
結果は自力を見せた大阪桐蔭高校の圧勝となりました。
決勝が終わってからも優勝した大阪桐蔭の話題よりも
地元出身の生徒だけで決勝まで進んだ金足農業の話題の方がテレビなどでも大きく取り上げられて
ちょっとしたフィーバー(最近使うんですかねこの言葉…)になっていますが、
そんな中でも吉田投手の投球数過剰の問題が取り上げられています。
過去にも我が愛媛県の代表校の済美高校の安楽投手が
決勝戦まで全て1人で投げ抜いた時に
アメリカのメディアも巻き込んだ問題になっていましたが、
それ以来高野連は一応対策(大会期間に休養日を設ける、13回以降のタイブレークなど)を
取ってはいたものの
同じことが問題として挙がってきました。
論調としては
「大人のプロ野球選手でも1試合で100球前後しか投げないし、次の登板まで中5~6日は開けるのに
成長期の高校生にそれ以上投げさせるのは投げさせ過ぎだ」
というもの。
そして
「1試合の球数制限を設けるべき」
という意見が色んな方面から出てきています。
一方高野連は
「一律の球数制限は部員数の少ない学校に不利に働く」
ということを言っていますし、その他にも
「球児がみんなプロに行くわけではないし
甲子園で燃え尽きたい子にとってルールで縛るのはいかがなものか」
という意見もあります。
その中でも高校野球の現場から挙がるのは
「同じ球数でもダメな子もいれば平気な子もいるから一律はおかしい」
という意見です。
たしかに、1人のエースが投げぬくのが当たり前という一昔前の球児でも
肘や肩を壊してプロでは活躍できなかった人もいれば
元巨人の桑田投手のように大きな怪我もなく(ダイビングキャッチで怪我はしましたが)
活躍し続けた人もいます。
これは何が違うのか
とてもわかりやすい記事があります。
『高校の投球数制限で問題は解決するのか? 野球の専門医が危惧する単純化』
(https://news.yahoo.co.jp/byline/oshimakazuto/20180823-00094133/)
ここで馬見塚医師は投球数だけでなく
『投球数』、『投球強度』、『投球フォーム』、『コンディショニング』、『個体差』
という要素を総合的に考えなくては
本当の意味での投球障害のリスクは語れないと言っています。
同じ球数を投げていてもフォームの良し悪し、コンディションの良し悪し、
どの程度の力の入れ方で投げているか、そもそもの成長の度合いなどによって
負荷が全く違ってくるということです。
ただ、
「だから球数を制限するなんてナンセンスなんだ」
という意見が力を持つとは思えません。
一人で何試合も投げ続けるということは
成長期の高校生に大きな負荷であることは間違いないので、
逆に「球数制限反対」の意見を持つならば…と言うか成長期の高校生を預かる現場の方達は
それらの要素について一人一人の部員のことを客観的に把握しておかなければいけない
ということです。
これはかなりの知識と観察眼が必要になりますし、
監督やコーチの方達の労力は計り知れないと思います。
どこまで負荷をかけて良いのかということは私自身の仕事でも常に考えていることです。
リハビリテーションでは低下してしまった筋力を向上させるために筋力強化運動などを行います。
負荷をかけなければ能力は上がらないのでできるだけギリギリの線で行ってほしいところですが、
患者さんの状態を色々な評価法で確かめながら
どの程度の負荷の運動を何回行うのか、
そして身体的・精神的変化を観察しながらそれを増減させて適量を見極めていくという作業は
決して簡単ではありません。
先人の文献や自分自身の過去の経験によって自信を持って処方できることもありますが、
正直言って迷うことも多々あります。
ましてや、甲子園で一人で投げ続けるというのは投げている本人は初めてでしょうし、
指導する監督やコーチでさえも経験したことの無いことでしょうから
「まだ大丈夫」なのか
「もうダメ」なのか
判断するのはものすごく難しいことだと思います。
ただ、それを本人の言葉だけで判断するわけにはいかないので
先ほどの要素の中から客観的に判断する術をもっていないといけないだろうなと思います。
それらの客観的な情報と主観的な『まだ投げられます』という言葉が一致すれば良いですし
本人は投げたがっているけど客観的にはもう無理だというサインが出ているのならば
それはやめさせる責任もあるのではないかと。
甲子園でいきなりは絶対難しいとは思いますが
普段からそういう対応をしていれば選手もそういう思考になるのではないかと思います。
そして今回は第100回の記念大会でしたが、
これから先何十年も続く大会にしようとするならば
主催する方達にも科学的なデータを蓄積してもらって
現場の方達がどのように考えたら良いのか指針になるようなものを
作り上げていってほしいなと思います。