「老衰」じゃなくて『フレイル』です。~その②~

理学療法士の山神です 😛 

 

いつもは雪なんてほとんど降らない今治も今年はちょっと寒い日が多いですね。

ここらへんで「寒い」なんて言ったら寒い地域の人に怒られるでしょうけど・・・。

ただ、私の北海道に住む姉は北海道より関東の実家の方が寒いと言っていたので

寒さの感じ方は雪があるとか気温が低いとかだけではないのかもしれません。

まあ、今治はさすがに北海道よりは暖かく感じるでしょうが。

 

前回は『フレイル』について言葉の成り立ちと定義について書きました。

「フレイル」って知ってますか?

「フレイル」は元々の日本語で言えば「老衰」や「虚弱」などにあたり、

加齢によって身体が弱ってきて

今後日常生活に支障が出ることが予測される状態のことで、

その基準として現在ある程度確立されたものとしては

 

①体重減少:6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少

②筋力低下:握力 男性<26kg 女性<18kg

③疲労:(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする

④歩行速度の低下:通常歩行速度<1.0m/s

⑤身体活動の低下:「軽い運動・体操」および「定期的な運動・スポーツ」のいずれもしていない

 

この5項目のうち3項目以上該当する場合に「身体的フレイル」とする

ということについてでした。

 

では、フレイルにならないようにするにはどうしたら良いのかということについて

今回は雑誌『理学療法』で2016年12月に特集されていた

ウォーキングとフレイルの予防の関係から考えてみたいと思います。

 

加齢によって誰しも筋力や持久力などいわゆる『体力』は

徐々に低下していきますが、

それをなるべく緩やかにするためには

体操や運動を含めた日常生活の活動量を考える必要があります。

 

ウォーキングについて言えば、少し前は結構言われていましたね

 

「1日1万歩を目指しましょう」

 

万歩計をつけたことのある方は分かると思いますが

1万歩ってけっこうハードルが高いですよね。

普通に家での生活と会社の行き帰りくらいではなかなか達成できません。

定年された方や主婦の方ではなおさらですね。

 

しかもこの1万歩を達成しても体力が思ったより上がらなかったらどうですか?

 

信州大学のグループの研究によると、

1日1万歩を毎日実施したところ

しないよりは良いけれども体力の向上はなく、

生活習慣病の改善も期待するほどではなかったということです。

 

では何が足りなかったのかと言うと「運動強度(きつさ)」の視点です。

 

1日1万歩は「運動強度が低すぎた」からダメだったらしいです。

 

「じゃあ1日1万歩ではダメなので3万歩歩きましょう」

とか言われたら絶望的な気分になりますがそういうことではないんです。

 

さきほどのグループが個人の最大体力を測定し

それをもとに強度を設定した運動を持続したところ

体力の向上と生活習慣病の改善もはっきりと認められたとのことです。

 

なので1日1万歩という運動では

ほとんどの人にとっては体力を向上させるほどの強度の運動ではなかったということですね。

 

じゃあ、その人の今の最大体力をどうやったら知ることができるかということですが、

客観的に数値として算出しようと思えば何かしらの機器が必要になります。

それができる環境にあればよいのですが、

現状ではそうではないことが大多数だと思いますのであまり現実的ではないですね。

 

運動強度の目安として有名なものに『METs(メッツ)』というものがあります。

どういうものかというと、

運動強度はそのときに身体で消費される酸素の量で推察することができますが、

安静時に身体が取り込む酸素の量(酸素摂取量)を基準として

色々な活動がその何倍くらい酸素を消費するかというのを表した数値です。

ちょっとややこしいですが実際に値を見てみると

 

安静(横になった状態):1.0METs

皿洗い:2.5

掃除機をかける:3.3

洗濯物を干す:4.0

果物や野菜を摘む:4.5

ですので

寝転がった安静状態と比べて皿洗いでは2.5倍、

洗濯干しでは4.0倍の酸素を必要とするということです。

 

(METsは多種多様な活動で算出されていますがここには書ききれないので

 興味のある方は国立栄養・健康研究所のHP(http://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf

 を参照してください)

 

ではどのくらいの強度の活動をしたら良いのかということですが、

2000年から群馬県中之条町で高齢者の身体活動を研究しているグループが

研究結果からひとつの基準を出しました。それは、

 

1日あたり

『男性:8000歩+中強度の活動20分 女性:7000歩+中強度の活動15分』

 

というものです。

 

歩数はわりと多めですね。

ただ、以前推奨されていた1日1万歩よりは少ないです。

その代わりプラスされているのが『中強度の活動』です。

中強度ってどのくらい?って皆さん思いますよね。

さきほどのMETsで言うと3~6METsくらいの運動のことです。

 

国立栄養・健康研究所のMETsの表を見たらわかりますが、

家事にしろ仕事にしろ楽にできる程度のものでは中強度になりません。

ウォーキングでも楽に歩くペースではダメで速歩きくらいでないと中強度にはなりません。

つまり中強度をイメージで言うと「楽ではないけど続けられないほどはきつくない」

というくらいでしょうか。

 

なので女性であれば7000歩歩く中に15分くらいは速歩きを入れるとか

7000歩は楽に歩いて家事や畑仕事などでまあまあ疲れる作業を15分はするとか

になりますね。

 

これを聞いてどう思いますかね。

私は「やっぱり加齢に対抗するのはけっこう大変なんだなぁ」と思いました。

ちなみに中之条町の研究については『メッツ健康法.com』というサイト

http://www.fod-nsystem.com/contents/2015/01/nakanojo.php)にまとめられていて

一日当たりに歩く歩数+中強度の活動(速歩き)と

予防(改善)できる病気についても表になっていますので興味があれば見てみてください。

 

ただし、誰でもこの基準に向かって頑張ればよいかというとそんなことはありません。

そこまでの運動をしてはいけない人もいます。

 

注意点としては病院にかかっている方は

まず主治医の先生にどの程度の運動までならばしても良いかを確認することです。

内科にしろ整形外科にしろ

歩くことや心臓等に負担を掛けるような作業を勧められない方は沢山いますので

自分で「大丈夫だろう」と思わず必ず確認してください。

 

今後私自身リハビリテーション専門職としても

介護予防の方面に力を入れていきたいなという思いもありますが

自分が将来要介護にならないように少しずつ準備をしなきゃと思います。

不惑を過ぎて介護保険料を払う年になってきましたので・・・。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました!!