痛みについて④~慢性の痛みは色々あって治りにくい~

理学療法士の山神です 😛 

 

そうこうしているうちに2018年も12月になってしまいました。

痛みについてのブログも今年中にはとっくに終わっているはずだったんですが…。

 

前回のブログでは痛みが続くと元々の性質から変化してしまうということ、

そして感じている痛みについてどのように認識したり行動したりするかによって

痛みの強さや性質をさらに変えてしまう可能性があるということを書きました。

これはどういうことでしょうか?

 

前回も書きましたが、

痛みというのは急性期の段階では感覚として入力した強さ通りのものを感じます。

強く傷害されれば痛みも強く、軽い傷害であれば痛みも軽いといった感じです(感覚-識別的側面)

しかし、それと同時に痛みは怒り、恐怖、悲しみなど様々な情動を引き起こし

不快感を生みだします(意欲-情動的側面)

さらにその痛みがどのようなものなのかを過去の記憶や注意、予測などに関連して

身体にとってその痛みがどのような意義があるのかを分析、認識します(認知-評価的側面)

 

このように痛みは単純な感覚のみで終わるのではなく様々な側面を持ち、

特に慢性痛に関してはどのように感じるか(意欲-情動的側面)や

自分にとってどのようなものなのか(認知-評価的側面)によって

痛みが強くもなり弱くもなるのです

 

ちょっとわかりにくい部分もありますね。

具体的な例で考えてみます。

(あくまで一例なので実際にあったエピソードではありません)

 

サラリーマンのAさんはパソコン使用中に軽い腰痛を感じました(感覚-識別)。

急いで仕上げなければいけない仕事があったので

腰痛によって注意を身体に向けなければいけないことでイライラしました(意欲-情動)

しかし、以前にも同じような状況で腰痛を感じたことがあり、

数日で治っていたので「心配するような腰痛じゃない」と思いました(認知-評価)。

 

といった具合です。

 

皆さん痛みを感じた時にはこれらは自然に生じる感情であったり考えであると思います。

 

そしてこの時点で痛みを感じた人が

恐怖心や不安を抱かなくて済むキャラクターであったり、

恐怖心や不安を掻き立てられない環境下では、

その人はその痛みに対峙し回復に向かいます。

↑ これすごく大事です!!

 

しかし、逆に痛みが持続することで恐怖心や不安を抱き続けてしまうと

どうなるでしょう?

 

ではさきほどのAさんの腰痛がずっと続いた場合で見てみます。

 

2か月ほど経ってもAさんの腰痛は消えませんでした。

その頃になると腰痛のために仕事が思ったようにできないことで

とても悲観的になっていました。

そして腰痛が消えないことで「重病かもしれない」「会社を辞めさせられるかもしれない」

といつも考えるようになり悩みが大きくなっていきました。

 

このように痛みが続いた時ネガティブな感情になることは想像できるかもしれません。

 

これは慢性痛の大きな問題である『破局化思考』の1つの特徴です。

 

破局化思考とは痛みについて

拡大視(「この痛みは重病」「この先きっとひどいことを引き起こす」など必要以上に大きく捉えること)したり、

反芻(「はんすう」:何度も繰り返し痛みについて考えてしまうこと)したり、

無力感(「この痛みについて自分は何もできない」といった想い)に苛まれたり

という特徴を持っています。

 

そしてネガティブな感情は行動までネガティブにしてしまいます。

 

さきほどのAさんで見てみると

 

Aさんは度々パソコンを打つ手を止めて腰をさするしぐさを見せるようになります。

時には「イタタタ」と口に出したり、「フーッ」と大きなため息をつくようになりました。

 

このように痛みによって生じるネガティブな言動を『痛み行動』と言います。

痛みが起きるのが怖いから安静に寝ているなども痛み行動に含まれます。

 

この破局化思考や痛み行動が症状を持続、増強させると考えられています。

「そんなことで?」と思う方もいるかもしれませんね。

 

さらに言うと

痛み行動がその人にとって利益をもたらすようになると

さらに症状を持続、増強させてしまうことも考えられるのです。

 

またAさんに登場してもらうと

 

Aさんが腰をさすったりため息をついたりしている姿に気づいた同僚が

Aさんに「大丈夫か?」と声をかけました。

Aさんがこれまでの経緯を話すと

「そんなに辛いのに大変だな。オレが手伝ってやるよ」

と言ってくれたおかげでAさんのその日の仕事量はかなり少なくて済みました。

 

この例では『腰をさする』『ため息をつく』という痛み行動が

結果的に仕事量を減らすという利益をAさんにもたらしました。

このような経験はAさんが「痛いことは自分にとって利益になる」と考えていようがいまいが、

積み重なるに従ってさらに症状を持続させてしてしまいます。

 

このように慢性痛というのは元々の痛みの原因を通り越して

様々な要因が絡んだ複雑な問題となってしまうのが怖いところです。

 

ただ、このように書いてしまうと

慢性痛の原因は全て心理的な問題だと思われてしまいそうですが、

そんなことはありません。

もちろん身体的な問題もあるのでリハビリテーションの出番もあります!

 

そのあたりを踏まえて次回痛みへの対処法を書きたいと思います。

 

最後まで読んで下さりありがとうございました!!