痛みの治療は腰を落ち着けて~慢性痛治療の満足度調査より~

理学療法士の山神です 😛

 

だいぶ寒くなってきましたね。

患者さんがよく言います「年寄りは寒いんよ」って。

今の時点でも僕は寒いと思ってるんですがその言葉が本当だとしたら

年々寒さを感じるようになるなんてちょっとした恐怖ですね・・・ 😥 

なんとかもうちょっと代謝をよくしないとと思う今日のこの頃です。

 

先日新聞に気になる記事が載っていました。

製薬会社のファイザーが2013年に行った慢性痛に関する患者と医師の意識比較調査についてです。

(インターネットで『慢性疼痛 満足度』と検索すると、

ファイザーの調査資料がヒットするので興味のある方は見てみてください)

この調査は通院経験のある慢性痛保有者5,150人

(痛みの持続期間3~6ヶ月458人 6ヶ月~1年541人 1年以上4151人)

慢性痛患者に対する治療経験のある医師103人に対して

慢性痛の治療についてアンケートをとったものです。

 

調査の内容は色々あるんですが、新聞記事の内容としては

患者側が「治療に満足している(満足した)」と答えた割合が47.1%だったのに対し、

医師側が「患者は治療に満足していると思う」と答えた割合が74.8%であり、

医師と患者の治療に対する意識に大きなずれがあることがわかった

という主旨でした。

 

この数値だけ見ると

「医者は患者のことがちゃんと見えてないんだな」と思う人もいるでしょうが、

これに関しては色々な意見もあると思いますし、

私自身医師ではないのでどうこう言える立場にはありません。

ただ、この調査を詳しく見ていくともう少し興味深い内容もありましたので

そのことを紹介したいと思います。

 

アンケートの中で医師・患者共に患者の満足度に最も影響するのは「治療効果」

だということは一致していました。

これは当然ですね。

そして患者が「通院先を変更したことがある」のが約64%

(半分以上の患者さんが治療効果に満足できないなどの理由で通院先を変えるということです)。

その中でも「3回以上変更したことがある」という人が約22%いました。

そしてさらに「通院先を変更するまでにその病院に通った回数」は約30%の人が1~3回

と答えました

(通院3回まででその病院に「見切りをつける」ということですね)。

 

これらの数値のそれぞれの関連性を強引につなげてしまうと

拡大解釈につながってしまうのでしない方がいいとは思いますが、

私個人的には「意外と早い段階で何回も病院を代える人が多いんだなぁ」という印象を受けました。

 

というのは慢性痛というのは“こじらせる”となかなか良くならないからです。

『慢性痛』はある定義によると

「急性疾患の通常の経過あるいは治癒、

あるいは障害の治癒に要する妥当な時間を越えて持続している痛み、

もしくはその痛みの原因となる慢性の病理学的な過程と一体となっている痛み、

または数ヶ月あるいは数年の間隔で再発する痛み」

と述べられています。ちょっとややこしいですね。

砕いていえば

「本当は治るはずの期間を越えても治らない痛み、

もしくは元々持っている慢性的な病気などによる痛み、

または一度良くなったように見えても再発する痛み」

ということです。

つまりは一般的な「痛み」に対する治療だけでは良くならない可能性がある(高い?)

ということです。

そこには構造的な問題(骨がどうとか筋肉がどうとか)の他に

心理的な問題(痛みにどれだけ考えが支配されているか)や

社会的な問題(痛みがあることで自分の生活がどうなっているか)なども関わってきます。

 

これらを改善するためには何が必要か。

いわゆる内服薬・注射・身体機能改善のためのリハビリテーションはもちろん、

その人の痛みに対する考え方や仕事や家の生活、趣味活動のあり方なども

場合によっては考え直さなくてはいけないということです。

少し考えただけでも簡単ではないですよね。

 

もちろん医療側の問題は大きいと思います。

私自身も医療人の端くれなので耳が痛いですが、

アンケートでも「治療効果が感じられない」の他に

「話を聞いてくれない」とか「説明が不十分」とか色々と不満がありますので、

それを謙虚に受け止めるのは大前提として

患者さん側ももう少しじっくりと腰を落ち着けて

痛みの治療に当たっても良いのではないかなぁと思いました。

 

というのは、私としては痛みの治療というのは医療側と患者さん側の共同作業だと思っています。

すぐに効果を出すのがむずかしいからこそ

「病院に行ったら良くしてくれる」

という前提に立つのではなくて

「こういう治療をしてみましょう」「生活のこういう面を見直して見ましょう」

という医療側の提案に対して

実際に自分で一定期間やってみて

「こういうときは良かったけどこれは良くなかった」

と返答する。

さらにそれに対して医療側が「じゃあ今度はこうやってみましょう」という

“コール&レスポンス”的な(?)やり取りの繰り返しが必要だと思います。

 

私自身のことで言えばこれまでも私の力不足で

患者さんが満足できる提案ができなかったケースはたくさんありますが、

こういうやり取りができる関係性を持てると

少なくとも“任せきり”の関係より前に進むことができていると感じています。

“主従関係”ではなくて自然にやり取りのできる関係性を築いていけるよう

これからも精進していこうと思っています。

 

長文を最後まで読んでくださりありがとうございました!!